この記事は、2025/1/8に公開された「Predictive Models Are Nothing Without Trust」の翻訳です。
空港は相互に関連するシステムであるため、予期せぬ出来事が1つ起きただけで混乱状態に陥る可能性があります。しかし、カナダのある小さな空港では、データが業界に大きな驚きをもたらす道標に変わりました。データが業務に真の価値をもたらし、最終的に顧客体験の向上を実現するには、信頼に裏打ちされたデータの洞察が不可欠です。ハリファックス国際空港局でビジネスソリューション担当シニアマネージャーを務める Ryan Garnett 氏は、同空港がどのようにデータへのアプローチを刷新し、運用効率と顧客体験を向上させる予測エンジンを開発したのかを、ポッドキャスト「The AI Forecast」で語ってくれました。
Paul 氏と Ryan 氏の対談から得られた重要なポイントをいくつかご紹介します。
Paul 氏: Ryanさんが、ハリファックス国際空港局で働き始めたのは1年以上前ですが、あなたが構築し、刷新し、達成しようとしていたのはどのようなものかをお聞かせいただけますか。
Ryan 氏: 私が最初に目指したのは、文化を築くことでした。データは消耗品ではなく、資産であるべきです。つまり、データに対する考え方を変え、データを活用すべきもの、価値あるものとみなす必要があります。しかし現実には、データに価値を見出している人はほとんどいません。私は、ある金融機関で CFO の部下として働いていたときのことを今でも覚えています。その金融機関に入社してまもなく、CFO と話をするようになったのですが、その CFO が私にこう言ったのです。「Ryan、私はデータに価値を感じていないんだ」と。それには、唖然としました。データを活用するために入社したばかりなのに、CFO がデータの価値を認めていなかったのですから。さらに CFO は、その理由を詳しく説明してくれました。彼はその理由を、5人の異なる人に同じ質問をしても、5つの異なる答えが返ってくることがあるからだというのです。この言葉は、私の心にずっと引っかかっていました。
データの文化を築くには、信頼が必要です。自分がデータに価値を置く理由や、チームがデータを重視する理由や、データを活用すべき理由を尋ねられれば、誰もが「情報に基づいて意思決定を下すため」とか「利益を生み出すため」とか「顧客との関係を向上させるため」などと答えるでしょう。しかし、そうではありません。真の理由は、信頼を構築するためなのです。それこそが達成すべき目的です。信頼を築けば、あらゆることが可能になります。
Paul 氏: データの活用はどのような方向に向かっていると思いますか。また、上層部はデータの再構築についてどのような反応を示していますか。
Ryan 氏: 上層部には感謝しています。なぜなら、データの価値を最初から理解してくれたからです。データが欠かせない理由を説明して、納得してもらう必要はありませんでした。彼らはデータを構築する機会を与えてくれたのです。多くの組織と同じく、戦略的な計画はありますが、私自身は文化を変えることを重視しています。職員たちに望んでいるのは、何が起きたかではなく、何が起きる可能性があるかを考えることです。そして、何かが起きたら、その重要性について検討してほしいと思っています。なぜなら、誰かにとって重要な数字が、実際に重要であるとは限らないからです。直感を無視する必要はありませんが、少し立ち止まって考えてもらいたいのです。
例えば、上層部に定期的にレポートを送っています。あるレポートを送った後、CEO からある数字が減少した理由について尋ねられました。その答えは「あの日を覚えていらっしゃいますか。ハリケーンが来た日です」でした。つまり、データの関係性を確認できたのです。このようにして、外的要因が数字に影響を与えていることへの理解が広がり始めました。その数字の落ち込みは重要なことなのでしょうか。必ずしもそうとは限りません。だからこそ、私たちはデータを使って幅広い視点で考えられるようサポートし、誰もがミスに備えたり変化を十分に理解したりできるようにしているのです。
Paul 氏: 将来の出来事に備えるために、乗客の移動に関するデータをどのように活用しているのか教えていただけませんか。
Ryan 氏: 私たちは過去に目を向ける代わりに、予測モデルを構築しました。そのきっかけは、職員が私たちを信頼し、さまざまなシナリオについて尋ねてくるようになったことにあります。例えば、空港の計画を担当している Victor は、乗客がいつ空港に到着するのかをチームスタッフが把握できるようにしてほしいと依頼してきました。抱えている問題を深く理解するため、私たちは彼にとって何が重要なのかを知る必要がありました。彼が具体的に知りたがっていたのは、空港が最も混雑する日や時間帯でした。そこで、手元にあるデータを確認するだけでなく、フライトスケジュールも確認することにしました。フライトの到着日時、予想される乗客数、機体のサイズ、座席数などです。しかも、このタイプの機体は座席数がこれくらいだと断定することはできません。航空会社によって仕様が異なるからです。また、快適な座席スペースを確保するために、一部の座席が取り外されていることもあります。
私たちは、リアルタイムの天気予報を取り込み、Halifax Discovery とも提携しました。Halifax Discovery は、ハリファックスでイベントを開催する団体の一部門です。この提携を通じて、今後10年間にハリファックスを訪れる人々に関するデータを入手できます。これにより、過去のデータを分析して、「毎週水曜日には、これくらいのサイズで、これくらいの数の飛行機が到着する可能性が高い」といった判断を下せるモデルを構築できるようになります。
しかし、吹雪が来たらどうなるでしょうか。過去の吹雪の日はどうだったでしょうか。週末と連休が重なった場合の影響はどうでしょうか。そこで私たちは、Meta 社が公開しているモデルを活用して予測を行ってみたところ、かなり正確に予測できました。このモデルを活用できる分野はほかにもたくさんあります。このモデルを使えば、空港が混雑する時間帯をかなり正確に予測できるため、警備員をどう配置すべきか決めることもできるのです。
Paul 氏: ハリファックス空港にとって、次のイノベーションはどのようなものでしょうか。
Ryan 氏: 私たちにとって、そして私自身にとって大きなテーマは、乗客体験の向上だと考えています。飛行機での移動に対する不安は、実際に多くの人が経験する問題です。人々は飛行機で移動することにとても不安を感じています。私が実現したいと願っている夢は、データドリブンなアプローチを通じて、人々が旅行に出発するとき、つまり玄関の扉を開ける瞬間から、不安をできるだけ軽減できるような方法を見つけることです。
今後も Spotify や Apple Podcasts で、「The AI Forecast: Data and AI in the Cloud Era」(AI に関する予測: クラウド時代のデータと AI) のエピソードを配信しますので、どうぞお楽しみください。
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