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  • Web3.0、メタバース、およびその先の見通し

     

    「インターネットの歴史」シリーズ :パート3

     

    Chris J. Preimesberger IT エディター/リポーター/パネルモデレーター

    2023年2月14日
    ばらばらに歩きながらデバイスでつながっている人々

    2020年以降 

    このシリーズの最初の2つの記事では、インターネットがどのように構想され、事実上の公共的な基盤として運用されるようになったのかを見てきました。また、データとクラウドの出現によってインターネットがどのように多様化し、国際的な商取引、ソーシャルネットワーク、エンターテインメントの主要なチャネルに変化したのかを振り返りました。

    そして今、21世紀の最初の30年で、インターネットは再び別の形に変化しようとしています。それは Web3 です。Web3 は、エンターテインメント、E コマース、ソーシャルなつながり、そして旅行の体験に、3D をはじめとする新たな次元をもたらすものです。Web3 では、拡張現実アプリケーションと超高速のデータ通信を利用してバーチャルな活動をする人々に、次のような驚きの新体験をもたらすと言われています。 

    • 歴史上有名な人物と話をする 

    • 遠く離れた場所を訪れ、まるで本当にそこにいるかのような感覚を味わう 

    • 野球のワールドシリーズの試合を、没入感あふれる環境で観戦する 

    • オーシャンライナーの船長を務める 

    • お気に入りの映画の出演者になる 

    • ブロードウェイのステージでパフォーマンスを披露する 

    例として挙げたものは、多くの人が「死ぬまでにやりたいことリスト」に入れる項目です。拡張現実や仮想現実のアプリケーションとハードウェアの開発と改善が急速に進んでいるため、ユーザーはこのような体験を、まるで実際に見たり聞いたり、匂いを嗅いだりしているかのように、リアルに感じられるようになるでしょう。

    Web3 (Web 3.0) は、Web とインターネットの進化における次の世代または段階を示すもので、Web 2.0 と同じくらい破壊的で大きなパラダイムシフトをもたらす可能性があります。Web 3.0 を構成している基本的なコンセプトは、分散化とオープン性、それにユーザーの利便性の向上です。このような属性のおかげで、ハッカーの侵入に悩まされた Web 2.0 よりも、高速かつ効率的で、安全性と収益性の高い E コマースが実現するとされています。

    面白いことに、こうした属性は WWW の最初の設計者がまさに自分たちのネットワークで意図していたものでしたが、クリーンで公正な取引を実現してハッカーを遠ざけるためのセキュリティ機能は備わっていませんでした。しかし、次世代のインターネットによってこの状況は変わるでしょう。少なくとも、次の Web のデザイナーはそう予言しています。

    Web3 は、無料サービスでユーザーを引き寄せ、集めた大量の個人データを使って利益を得ている企業から人々のデータを守るという名目で、構築が進められています。Web 3.0 では、ユーザーはコンテンツを作成するだけでなく、そのコンテンツを所有、管理、収益化することができます。ブロックチェーンと暗号通貨の実装により、NFT と呼ばれる非代替性トークン (ブロックチェーン上に存在し、複製ができない一意の暗号化トークン) を利用できるようになったためです。ブロックチェーンテクノロジーには、分散化やトークンエコノミーといった概念が組み込まれています。ゼロトラストセキュリティとも呼ばれています。


    Web3 で実現するとされるものの中には、まったく新しい (仮想) 世界のように、まるで魔法のように思えるものもありますまた、大規模な AI が効果的に機能すれば、やはり魔法のように見えるかもしれません。しかし、真実ははるかに単純です。


    大規模な AI の詳細はブログをご覧ください。

    つながりが視覚化された地球の画像

    Web3 が登場した経緯

    Web3 という言葉は、2014年に Ethereum の共同設立者である Gavin Wood 氏によって作られたものですが、2021年になって、このアイデアが暗号通貨の愛好家や大手テクノロジー企業、それにベンチャーキャピタル企業の関心を集めました。一部の専門家は、Web3 がユーザーのデータセキュリティ、スケーラビリティ、プライバシーを向上させ、大手テクノロジー企業の影響力に対抗できる力をもたらすと考えています。 

    その一方で、不十分なモデレーション、有害コンテンツの拡散、少数の投資家や個人への富の集中、より広範なデータ収集によるプライバシーの侵害といった可能性を挙げて、分散型 Web に懸念を示す専門家もいます。

    皮肉なことに、ここで挙げた Web3の潜在的なリスクは、初期のインターネットで実際に起こったことでした。ソートリーダーの中には、インターネットの最初の30年と次の30年の間にそれほど大きな違いは生まれないと考える人たちもいます。しかし、彼らのような人たちよりも、新しい Web がまもなく実現すると確信している人々の方が多いのです。

    明るいオフィスでコンピューターを使用して作業している女性の画像

    次の Web はどのような姿に?

    今から30年後のインターネットは、世界と同じように、大きく異なる姿を見せていることでしょう。ほとんどのアプリケーション、ビデオネットワーク、ビデオゲーム、ライブテレビ、イベントで、音声認証や生体認証によってアクセスが承認されるようになり、パスワードや母親の旧姓を尋ねられるようなことはなくなるはずです。ただし、一部のユースケースでは、引き続き指紋と虹彩が使われるでしょう。また、新しい Web を利用する際には、大きなヘッドセットを着用したり、スマートフォンやタブレットを使用したりしなくても、メガネ型デバイスに映し出される拡張現実や仮想現実を利用できるようになるはずです。 

    Web3 とメタバースのテクノロジーは、陰と陽のようにお互いを支え合っています。メタバースが単一のデジタル空間であるのに対し、Web3 は分散型の概念をベースとしていますが、Web3 のインフラストラクチャーはメタバースのコネクティビティの基盤として機能するようになるでしょう。また、1度定着したテクノロジーが一夜にして消えてしまうことはないため、Web3 と Web 2.0は何年も共存することになります。

    メタバース的な環境を提供した初期のビデオゲームの Second Life は、今の私たちができることに比べれば初歩的だと、Enderle Group 社で主席アナリストを務める Rob Enderle 氏は最近のインタビューで述べています。その上で、メタバースに対する現在の取り組みや関心はまだ「ハイプサイクル」内であると、同氏は言います。

    「これから数年間は宣伝的表現や誇張表現が見られるはずです」と、Enderle 氏は語っています。「これ (Web3 とメタバース) が成熟すれば、世界を揺るがすことになるでしょう。インターネットを凌駕する可能性もあります。仕組みが異なっているからです。とはいえ、このために費やされる労力はインターネット以上のものになるでしょう」

    スタンフォード大学の教授でテクノロジーフューチャリストの Paul Saffo 氏は、2021年12月に行った講演で次のように述べています。「代替現実というアイデアは非常に古くからありました。代替現実に強く惹かれる人々は、いつの時代にも存在します。代替デジタル世界に関する取り組みは何十年にもわたって繰り返されてきましたが、ほとんどの場合、テクノロジーにお金がかかりすぎる、性能が十分ではない、あるいは面白くないといった理由で、一般ユーザーから敬遠されてきました。非常に大きな仮想現実ヘッドセットは、ユーザーを別の環境に連れて行くときに頭痛を引き起すことが多く、大きな欠点となっていますが、コンピューターで生成された画像を1つの物理環境に統合する拡張現実も、依然として複雑すぎますし、コストがかかりすぎます」。

    「メタバース」とは何でしょうか。また、どれくらいの価値があるのでしょうか。その答えは、誰に尋ねるかによって変わってくると Saffo 氏は言います。

    「将来のメタバースは、理論的には、テクノロジーと市場が結び付いた広大な場所になると思われます。具体的には、最先端のコンピューターハードウェアとチップ、ビデオゲーム開発、クラウドコンピューティング、テクニカルレンダリングデジタル、それにコンテンツ作成が、ブランディング、広告、デジタル通貨の機会と結び付くことになります」と Saffo 氏は述べています。「しかし、テクノロジー企業やフューチャリストは実際にもたらされる体験をいまだ明らかにしておらず、定義も存在しません」。

    さらに Saffo 氏は、これと同じくらい重要であり、初期の段階ではおそらくコンシューマーエクスペリエンスよりさらに重要なこととして、メタバースの成長が企業に受け入れられる方法を見つける必要があると指摘します。

    「今では、民間や軍のパイロットによる飛行シミュレーションなどの体験を、企業が仮想現実の一形態として提供することもできます。パイロットは離陸時、着陸時、緊急時の訓練を行っています」と、同氏は言います。人気ゲームの Flight Simulator を30年前から制作してきた Microsoft 社も、メーカー、ヘルスケア企業、教育企業向けに、ハンズフリーで正確に作業ができる独自の複合現実ヘッドセット HoloLens を提供していると、Saffo 氏は指摘しました。

    その上で、Saffo 氏は最後にこう締めくくりました。「VR とは何なのかを定めた定義はなく、拡張現実の定義もありません。現時点で、(メタバースが) 主に存在するのは、デジタルの代替世界を実現し、メタバースの提案するビジョンを最も現実に近づけているビデオゲームの世界です」。

    「(メタバースは) 存在するのでしょうか。そして、何なのでしょうか」と、Morgan Stanley 社でエクイティストラテジストを務める Edward Stanley 氏は、最近公開されたレポートでクライアントに問いかけています。「その答えは、イエスでもあり、ノーでもあります。純粋な形では存在していないからです。ユーザーが膨大な数の体験をシームレスに行き来し、デジタルアバターや財産を一緒に持ち運べるようになるには、何年もの時間と企業間のコラボレーションが必要になります」。

    コンピューターの画面を眺める女性

    Web3 は実用レベルの前進?

    初期のインターネットとワールドワイドウェブは、信頼を暗黙の前提としてその基盤の主要部分が設計されていました。そのため、利益を求めるビジネスパーソンや詐欺師が、疑いを持たないユーザーをさまざまな方法で利用できる状態でした。また、悪意を持った人たちが、ユーザーに個人情報を提供するよう脅したり、ユーザーのデバイスにマルウェアを埋め込んだりして、窃盗や詐欺から違法な利益を得ることが可能でした。Web3 の背後にある考え方は、個人や組織が過去にハッキングやマルウェアによって不正に侵入され、苦しめられたのと同じ手法でのハッキングを構造的に不可能にする (または少なくとも極めて困難にする) ことです。

    しかし、これは一夜にして実現できることではありません。少なくとも今の10年が終わるまでは Web2.0 が主流であり続けますが、その間に、しかも表には出ない形で、まったく新しい国際的なコミュニケーションプラットフォームが構築されつつあります。Web3 がいつ主流になるのかは誰にも予測できず、普及しない可能性もありますが、Web3 を支えている強力な利害関係者が簡単にあきらめることはないでしょう。 

    B2B 企業は、ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨で購入や支払いを行い、DeFi (分散型金融) で銀行取引や投資を行い、3D ビデオメッセージやライブストリーミングを使ってマーケティングや販売関連のあらゆるコミュニケーションを行うようになるでしょう。そして、すべての企業がデータセキュリティのためにブロックチェーンベースのプロセスを導入するようになるはずです。クラウドベースのアプリケーションはすべて、サーバーレスのサブスクリプションサービスになるでしょう。

    従来の Web アプリケーションをまったく新しい Web3の世界でシームレスに動作するアプリケーションに変換するサービスに特化した新しい業界が、すでに発展し始めています。例えば、Internxt 社Privy 社といった企業です。

    B2C 企業は、3D ヘッドセット (最終的には老眼鏡並みに小型化)、次世代の3D ビデオゲーム、アバター、GameFi (ゲームプレイを通じて暗号通貨を獲得)、NFT など、まだ馴染みのないさまざまな製品やサービスを大多数のコンシューマーに提供するようになるでしょう。

    この分野でビジネスを検討している人は、多くの調査が必要になります。しかし、Web3 関連の特許やアイデアの多くは、想像力が豊かで進歩的な考え方をするソートリーダーによって、すでに生み出され、公開されています。

    鉄塔を下から見上げた様子

    Web3 によるデータの氾濫に対処する方法は?

    データに関しては、Web3 によって、デジタルチャネルを通過するデータの総量が劇的に増えることが予測されます。その理由は、Web3 の大きな「パイプ」と、将来の活動を促進するために構築が進められている新しい強力なサーバーによって、新たな「重い」分析アプリケーション、3D ビデオ、拡張現実と仮想現実のファイル、NFT、および新しいタイプのファイルが作成され、利用されるようになるためです。 

    2000年代にクラウドが登場したときのように、このテクノロジーの将来についてはさまざまな見方があります。現在、コネクテッドデバイスを使用しているすべての人にとって、クラウドの使用は当たり前のことであり、事実上すべてのアプリケーションがクラウドベースになっています。しかし、Web3 とメタバースの時代に移行するにつれて、状況はどのように展開するのでしょうか。

    「Web3 は『危険な場所』だというのが、今の私の意見です。あまりにも多くの人々が間違った口実で Web3を『売り込み』、多くの事実を隠しています」と、Cloudera で EMEA フィールド担当 CTO を務める Christopher Royles 博士は述べています。「簡単に言えば、Web3 は非常に民主化された方法で Web を再発明しようとしています。私は Tim Berners-Lee 氏の見解に同意しており、この見解に従うことを勧めています」。

    とはいえ、メタバースは Web3 とは大きく異なるものだと、Royles 氏は言います。

    「簡単に言えば、私たちは製造業など、特定の業界の特定の顧客がデジタルツインを作成するのを支援しています。最も単純化すれば、ヘッドセットとコントローラーでデジタルツインに変身し、そのアバター (デジタルツイン) を仮想空間に配置するということです。私の考えでは、メタバースの所有者と構築者が、マイクロトランザクション、Facebook のスターやチップ、エンゲージメントレベルなど、収益を生み出すプロセスに情報を提供するために、このエクスペリエンスに関する膨大な量のデータを収集し始めることは間違いありません。このリストはまだまだ続きますが、一言で言えば『広告』です」と、Royles 氏は述べています。

    「実際の具体的な例を挙げれば、私は以前、石油・ガス会社と仕事をしていました」と、Royles 氏は言います。「目の前には本物のポンプがあり、音を立てながら動いていました。しかし、私が Microsoft HoloLens を装着すると、すぐに回転数、油圧、水位などの主要な統計データが、(ポンプの上に) 重ねて表示されました。一歩下がれば、そこには (ビジネスに必要な) データがあるのです」。 

    「仮想環境を3D で説得力のあるリアルさで表現するために、データはメタバースの基盤となるでしょう。デジタルツインを追加することで、仮想世界に生きたデータを送り込めるようになります。これは実に興味深いことです」

    本書は「インターネットの歴史」シリーズの最後の記事です。 

    著者

    著者 Pedro Pereira 氏の写真

    Chris J. Preimesberger

    Chris J. Preimesberger 氏は、カリフォルニア州レッドウッドを拠点に、ジャーナリスト、編集者、研究者として活動しています。以前は、eWeek 誌の編集長として、エンタープライズ IT に関する報道全般を統括していました。2017年と2018年には、分析結果に基づくランキングを公開している調査会社 Richtopia 社から、世界で最も影響力のある250人のビジネスジャーナリスト (65位) に選出されています。

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