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  • ビッグデータの有望性を示す宇宙ベースの AI

    カナダのオタワを拠点とする宇宙ライター兼ジャーナリスト、Elizabeth Howell 博士

    2022年7月12日
    宇宙空間にあるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の写真

    地球から100万マイル離れたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、データ転送機能の最先端を進んでいます。

    この観測衛星は、初期宇宙、太陽系外惑星、その他の天体を調べるために、2021年12月25日に打ち上げられました。しかしまずは、数カ月にわたって厳密な試運転を行い、データが正しく地球に戻ってくることを確認する必要があります。

    ミッションマネージャーが2月11日に提供した最新情報によると、主鏡が適切に位置合わせされており、機器が深宇宙からデータを受信し始めています。

    “実際に無重力空間にある鏡のデータを取得するのは今回が初めてです”

    NASA ゴダード宇宙飛行センターでジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の光学望遠鏡要素マネージャーを務める Lee Feinberg 氏は、2月の記者会見でこのように述べています。

    また、「これまでのところ、取得したデータはモデルや予想と一致しています」とも話しています。ウェッブは、位置合わせの作業をさらに数週間続け、2022年の夏に使用可能な最初のサイエンスデータの返送を開始する予定です。

    宇宙空間でデータを格納および分析する方法

    しかしこの望遠鏡では、作業の準備が整うと新しい問題が発生します。ウェッブのジンバル構造のアンテナアセンブリには、望遠鏡の高データレートのパラボラアンテナが含まれており、Blu-ray に相当する約28.6ギガバイトの科学データをこの観測衛星から地球に1日2回転送する必要があります。望遠鏡のストレージ能力が65ギガバイトと限られているため、ハードドライブがいっぱいにならないように定期的にデータを送り返す必要があります。

    問題は、この膨大なデータのどこを最初に調べるかを決めることです。幸いなことに、ウェッブのツールは大部分が Python で利用可能であり、世界中の研究所とデータを共有して、支援を受けることができます。そうは言っても、科学者たちの時間は限られています。研究者は Zooniverse などのクラウドソーシングベンチャーを通じて画像の調査を支援する「市民科学者」を募集することもできますが、天文学界では、できるだけ早く適切なデータを見つけるために人工知能 (AI) に目を向けています。

    意思決定者に送り返すデータを決定するために AI に必要なのは、優れたデータと、機械学習などによる強力なトレーニングアルゴリズムです。幸い、宇宙業界の助けを借りることができます。この業界では、進化を続ける AI システムが毎月複数の衛星から送られる地球の観測記録を解析しています。気候変動に関連する山火事や洪水などの動きの速い事象に関する情報を AI によって迅速に解析している企業や宇宙機関は世界中にたくさんあります。

    曇り空の地球を背景にした衛星

    プロセスは (理想としては) 宇宙で開始され、地球に何を送り返すべきかを衛星が軌道上で判断します。例えば、欧州宇宙機関の ɸ-sat-1 (“phi-sat-1”) 衛星は、2020年に打ち上げられ、宇宙でのフィルタリングをテストしました。画像は雲が多すぎてフィルタリングしなければ使用できないものだったのです。注目すべきは、それまでの衛星でも雲で苦労していましたが、この衛星はその問題を解決するテクノロジーを搭載して打ち上げられた点です。

    ESA のブログ記事には次のように記載されています。「このような完璧ではない画像を地球にダウンリンクしないように、ɸ-sat-1 人工知能チップはその画像をフィルタリングして、使用可能なデータのみが返送されるようにします。これにより、このデータすべてを処理するプロセスの効率が上がるため、ユーザーはよりタイムリーな情報にアクセスでき、最終的には社会全体に利益をもたらします」

    衛星に収まるハードウェアはそれほど多くないため、このフィルタリングは宇宙では必然的に制限されます。地球に送信される画像には、地上にあるコンピューターで安定性を高めるための技術が適用されます。これは、地理空間インテリジェンス (GI) と呼ばれるプロセスです。

    誰でも利用できる GI、AI、ML

    GI は、地球観測機関の間で急速に成長している機能であり、機械学習を使用して関連性のある特徴 (作物の褐変や水位の上昇など) を抽出し、数秒以内に画像間の変化を表示します。

    Cloudera のプリンシパルソリューションエンジニアである Ian Brooks によると、情報が地球に到達したときに、並列コンピューティングを使用してデータを選別すると実用的です。並列コンピューティングにより、複数のプロセッサが複雑な計算をより小さくて簡単に処理できるジョブに分割できます。このシステムによって、同じ研究所内の異なるマシン間でジョブを分散でき、世界中の異なる地域に分散することさえできます。


    あらゆる業界の組織が AI と機械学習の採用を急速に進めていますが、残念ながら、その取り組みの多くは軌道に乗っていません。AI または ML のプロジェクトに着手する場合は、成功のための準備が必要です。

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    「利用可能なコンピューティング能力のレベルのおかげで、この段階ではおそらくデータに優先順位を付ける必要さえありません。地球上の複数の送信先で、同じデータセットを使用して別の作業をすることもできるでしょう」(Ian Brooks)

    さらに、AI がデータから導き出した結果を解釈することはそれほど難しくありません。短期集中トレーニングやコンピューターサイエンスの学位のほかにも、Brooks によると YouTube、大規模オープンオンラインコース (MOOC)、その他の機関で、オンラインで自由に利用できるデータサイエンスプログラムを提供しており、ツールや技術の学習を支援しています。こうした E ラーニングにより、多くの人が AI を支援することができます。

    地球外でのストリーミング分析

    機械学習では、データがすべて地球に到着するのを待ってから処理を実行するのではなく、地球に戻ってくるときにストリーミングデータを使用してそのデータに関する分析を実行しようとする流れがあります。「デバイスから送られてくるデータに関するさまざまなアラートやダッシュボード表示を迅速に取得して、重要なトレンドを判断できます」と Brooks は説明しています。

    データを圧縮して処理するというこの理論は、生命の兆候を探すプログラムなど、多くの情報を探すウェッブのプログラムに特に適しています。例えば、Search for Extraterrestrial Intelligence (SETI) 協会は、ウェッブが地上の電波望遠鏡と連携する可能性があると見ています。

    この協会の上級天文学者、Seth Shostak 氏によると、地上の電波望遠鏡は、地球の自転と同じ速度で動く空ベースの狭帯域信号 (空から来ている信号) を探しますが、ウェッブは惑星に生命が存在する可能性を示す酸素や窒素などの元素に関する情報を送り返すことができるかもしれません。

    「機械学習を利用し、実信号を認識して正しくないものをすべて拒否するようにソフトウェアをトレーニングすると、調査がスピードアップするのは明らかです」(Shostak 氏)

    これはもちろん、ウェッブが地球と同程度のサイズの惑星を見ることができると仮定してのことですが、その保証はありません。ほとんどの研究者は、この望遠鏡は巨大な木星サイズの惑星を見るのに適しているとしています。

    Cloudera の Brooks は、宇宙ベースの AI にはできる限り素早く情報を整理したい企業向けの用途が多数あると指摘しており、その例として、居住できる可能性のある惑星に「スターウォーズ」のようなドローンを配置して AI で進路を誘導するというプロセスを挙げています。

    現在利用されているフィルタリングツールについて Brooks は「干し草の山の中にある1本の針を探すようなものです。1つの対象のみにうまくねらいを定めるという素晴らしいコンセプトです」と話しています。Brooks によると、機械学習によって明らかになった結果が興味深いブラックホールでも潜在的に生命に適した場所でも、望遠鏡の利用者は適切な AI の助けを借りることでその結果を前進させるための知識を活かすことができます。

    地球では、ストリーミングデータと AI の恩恵を受けるのは天文学者や天体物理学者だけではありません。例えば医療分野では、医師がリアルタイムにデータを分析して医療を改善するために ML を活用し始めています。小売や物流から銀行や保険まで、他の多くの業界も同様の動きがあります。

    どの業界であっても、大量のストリーミングデータに遭遇する可能性があります。そのデータのすべてに取り組み、ビジネスに AI を使用する方法を学びましょう

    著者

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    Elizabeth Howell 博士

    Elizabeth Howell 博士は、カナダのオタワを拠点とする宇宙ライター兼ジャーナリストです。宇宙ビジネスに関して年間数百の記事を書いており、小学生から熟年層までを対象に科学と執筆のワークショップを開催しています。また、4冊の本の著者、共著者です。

    ElizabethHowell.com

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