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    「インターネットの歴史」シリーズ:パート1

     

    Chris J. Preimesberger IT エディター/リポーター/パネルモデレーター

    2023年1月11日
    ばらばらに歩きながらデバイスでつながっている人々

    1974~1993年

    IBM 社と Apple 社が1970年代後半にパーソナルコンピューターを発表したとき、こういったデスクトップマシン (高価な文鎮と皮肉られることもあった) が、その後、激増するデータを処理する主要な機器として使われるようになると誰が考えたでしょうか。当時はすでに、タイプライターや集計用紙が普及し、テレビやラジオ、新聞紙がニュースを報じ、郵便サービスや宅配サービスが荷物を届けてくれていました。これ以上必要なものがあるなどとは、想像できなかったのです。

    初期の PC とインターネットの関係は、機関車のエンジンが山を登れるほど強力ではなかった1840年代に、アルプス山脈をまたいでウィーンとベネチアを結ぶ線路が建設された話になぞらえることができます。オーストリアとイタリアは、2万人の労働者を動員して線路を建設しました。それは、いつの日か山脈を越えられる機関車が作られるはずだと考えたからです。それからおよそ10年後、新たに登場した Engerth 式の蒸気機関車が山脈越えを実現しました。

    同じように、IBM 社や Apple 社といった企業は、実際に利用できる機関車 (アプリケーション) がいつか登場すると考えて線路 (社内に設置され、社外とはつながっていない PC のネットワーク) を構築しました。1970年代後半から80年代前半に PC を購入した人々は、その投資によっていつか新しい機能がもたらされると信じており、実際その予想は的中したのです。それでも、自分たちの PC がおよそ15年後に登場するインターネットの基盤となり、デジタル情報の爆発的な増加という世界が経験したことのない状況を引き起こすとは、考えてもいませんでした。これが、ビッグデータ時代の幕開けだったのです。


    今となっては、インターネットがなかった時代を想像するのは難しいでしょう。しかし、考えてみてください。米国勢調査局がようやくデジタル化を終えたのは、2020年のことでした。ペタバイト規模のデータを分析するのは、簡単な作業ではないのです。

    その取り組みの詳細については、こちら

    明るいオフィスでコンピューターを使用して作業している女性の画像

    まもなく誕生50周年を迎えるインターネット

    2024年5月は、今日インターネットとして知られている仕組みを説明した文書が初めて公開されてから50年目にあたります。

    1973年9月、Vinton G. Cerf 氏と同僚の Robert Kahn 氏が執筆した論文『A Protocol for Packet Network Intercommunication』が、『IEEE Transactions on Communications』の1974年5月号に掲載されました。この論文は、新しいプロトコルと標準的な電話網を使用して、デジタルデータのパケットをあるコンピューターノードから別のコンピューターノードに転送したり、さらに別のノードや他の多くのノードに転送したりする方法を説明したものでした。

    インターネットの主な目的は、データの読み込み、移動、使用、および保存です。そのようなデータ転送用のプロトコルの1つに、同じ年に設計、開発された TCP/IP (Transmission Control Protocol/Internet Protocol) があります。TCP/IP は今もインターネットの主要なデータ転送プロトコルですが、標準的に使われるようになったのは1983年のことでした。もう1つの代表的なデータ転送用プロトコルに FTP (File Transfer Protocol) があります。FTP を使うと、リモートコンピューターにログインして、そのコンピューター上のデータファイルを一覧表示したり、ダウンロードしたりできます。

    78歳の Cerf 氏は現在、Google 社のバイスプレジデント兼チーフインターネットエバンジェリストを務めています。1983年に TCP/IP と FTP を使用したインターネットの誕生に立ち会った同氏は、その開発を支援し、インターネットの歴史における数々の重要な出来事に影響を与えたことから、ネットワークの父の1人と呼ばれています。

    「始まりは、コンピューターマニアが集まって、世界中のあらゆるネットワークやコンピューターを情報に基づいて相互接続できれば素晴らしいと考えたことでした。スムーズかつ柔軟に情報を共有できるようになったらすごいのではないかと思ったのです」と、Cerf 氏はインタビューで述べています。

    「研究者と軍関係者しかインターネットを利用できない時期が長く続きましたが、1989年頃に商用サービスが開始されました。その後まもなくして Tim Berners-Lee 氏が WWW (World Wide Web) を発明し、1994年に Netscape 社の Marc Andreessen 氏と Eric Bina 氏が Mosaic (画像を扱える初めてのブラウザ) を誕生させたことで、突如として一般の人々がインターネットに接続するようになりました。このときに、私たちは大きな転換点を迎えたのです」

    これは実に大きな変化でした。1990年代後半のクラウドコンピューティング (当初は「アプリケーションサービスプロバイダー」と呼ばれていました) の登場もかなり大きな出来事ですが、情報テクノロジーの分野でこれに匹敵する変化はなかったと言えるでしょう。

    つながりが視覚化された地球の画像

    生みの親が語る WWW の誕生秘話

    インターネット上を行き交うデータが増えるにつれて、ユーザーにとってより効率的に機能する新たなツールが必要になっていました。WWW が誕生したのは、これ以上ないタイミングだったのです。

    「1989年3月12日、私は情報の流れを改善するために、『クモの巣 (Web) のようにノートを互いにリンクさせる』という内容の提案書を提出しました」と、CERN 研究所で働いていた Berners-Lee 氏は、WWW の誕生25周年にあたる2014年に述べています。「CERN は物理学の研究所であるため、このような一般的なソフトウェアプロジェクトは正式に認めてもらえませんでしたが、上司の Mike Sendall 氏が研究の合間に取り組むことを許可してくれました。私が最初のブラウザとエディターを開発したのは、1990年のことです。1993年には、多くの要請を受けた CERN が、WWW のテクノロジーを無償で誰もが永久に利用できるようにすることを発表しました」

    この初期に開発したコンポーネントが、何万人もの人々が共同で Web を構築するための基盤になったと、Berners-Lee 氏は言います。「今では、世界のおよそ40パーセントの人々がオンラインでつながり、創造的な活動をしています。Web は何兆ドルもの経済的価値をもたらし、教育と医療を変革し、民主主義を守るための新たなムーブメントを世界中で引き起こしてきました。しかも、私たちはまだスタートしたばかりなのです」

    今こそ、私たちがすでによく知り、利用している Web の未来について前向きに捉え、「考え、議論し、実行する」ときだと、Berners-Lee 氏は言います。「インターネットのガバナンスと未来に関わる重要な決断を迫られている中、私たちの誰もが Web の未来について声を上げることが重要です。インターネットにつながっていない世界の残り60パーセントの人々が早くオンラインに接続できるようにするには、どうすればいいのでしょうか。Web が主要な言語と文化だけでなく、すべての言語と文化をサポートできるようにするには、どうすればいいのでしょうか」と、同氏は問いかけます。

    「モノのインターネットとつながるためのオープンスタンダードに関して、どうすればコンセンサスを得られるでしょうか。オンラインでの体験をひとくくりに制限されることを許容するのでしょうか。それとも、オープンな Web の魅力と、そういった Web がもたらしてくれる発言、発見、創造の力を守り抜くのでしょうか。ネット上のスパイ活動について公への説明責任を果たすための抑制と均衡の仕組みをどのように構築すればいいのでしょうか。私はこのような問いを抱いていますが、皆さんはどのような問いをお持ちですか?」

    インターネットでつながることを目指すこの大規模な動きの中で活躍した人物は、ほかにもいます。Sun Microsystems 社の James Gosling 博士 (同社の Java プロトコル開発チームのリーダー)、John Chambers 氏 (Cisco Systems 社の CEO として、1992年にインターネットネットワーキング製品の分野で同社をトップに導き、以来その地位を維持)、Oracle 社の Larry Ellison 氏 (信頼性の高い並列データベースを初めて開発)、Andy Grove 氏 (Intel 社の共同創設者で、あらゆるコンピューター向けのプロセッサの製造で同社をトップに導く)、John McAfee 氏 (ネットワークとデバイスのセキュリティ分野におけるパイオニア) は、その一例に過ぎません。

    鉄塔を下から見上げた様子

    PC、インターネット、WWW プロトコルの融合で普及するインターネット

    インターネットは科学者が信頼を念頭に置いて設計したもので、ユーザーはお互いに配慮し、他のユーザーのプライバシーや情報を尊重することが前提とされていました。しかし、個人データを盗み取るコンピューターハッキングが行われるようになり、ハッキングされるデータの量が急増。ハッキングは、ヘッジファンド、石油とガスの生産、武器の製造、医療/製薬業界と並ぶ、世界で最も収益性の高いビジネスとみなされるまでになりました。

    公衆ネットワークが終わりのない困難なセキュリティ上の問題に見舞われたのは、まさにこのときからでした。

    「このときから、一般の人々が巻き込まれるようになりました。ネットが多くの場面で有効活用されるだけではなく、悪用されるようにもなったのです」と、Cerf 氏は話します。「悪用する人はそれほどたくさんいるわけではないかもしれませんが、さまざまな問題を引き起こすには十分な数なのです。彼らは他の人を巧みに利用するためにネットを悪用します」

    その結果、コンピューターのハードウェアとソフトウェアのセキュリティは、1994年に Netscape ブラウザが登場してインターネットが普及してから28年間で、数十億ドル規模のビジネスに成長しました。Cerf 氏は、企業、政府、および個人がインターネットの起源に目を向け、将来のインターネットにおける個人情報と企業情報のセキュリティを改革すべきだと提言しています。

    「オペレーティングシステムが自らを防御する能力について、もう一度真剣に検討することが非常に重要です」と、Cerf 氏は言います。「強力な認証、2段階認証を使用し、暗号化方式のメカニズムを活用して、すべてのコンピューターをあらゆるものから保護する必要があります。そしてもちろん、機械同士がつながる今の世界では、デスクトップやノートパソコン、タブレット、モバイル機器だけでなく、インテリジェントな家電製品もこのネットワークに接続しているため、その重要性はますます高まっているのです」

     

    コンピューターの画面を眺める女性

    インターネットの利用とデータ量が爆発的に増加した1995~2006年

    1990年代半ば、それまで個別に存在していたデスクトップ PC が、ようやく一般の電話回線で接続されるようになりました。さらに、使いやすい Netscape ブラウザに加え Microsoft 社のブラウザが新たに登場したことで、インターネットユーザーは驚くほどの勢いで増加します。InternetWorldStats.com の推定によれば、インターネットを定期的に利用する人の数は、1995年の時点でおよそ1600万人に達していました。さらに、Amazon Web Services が初の大規模な商用クラウドサービスである Simple Storage Service (S3) をリリースした2006年9月には、10億8000万人に膨れ上がっていたと見られています。 

    クラウドの構想が語られるようになったのは、このときからです。

     

    「インターネットと WWW の出現がもたらした最も驚くべき影響は、人々が自分の知っていることを共有して誰かの役に立ちたいという理由だけで作成したコンテンツが、雪だるま式に増加したことです」と、Cerf 氏は述べています。「これは『来る者は拒まず』を体現するものであり、どのようなビジネスモデルも歓迎されますが、依然として人々の善意が根底にあると思います」

    たしかに、他の人の役に立つデータを見つけて提供したいという人々の思いが、大きな成果を生み出しましたが、インターネットの使命はそれだけではありませんでした。WWW が E コマースの発展につながった結果、データの作成と移動が飛躍的に増加し、今日のビッグデータと呼ばれるものを収集しようとする動きが加速したのです。

    本書は「インターネットの歴史」シリーズの最初の記事です。今後2つの記事が投稿されますので、どうぞご期待ください。

    著者

    著者 Pedro Pereira 氏の写真

    Chris J. Preimesberger

    Chris J. Preimesberger 氏は、カリフォルニア州レッドウッドを拠点に、ジャーナリスト、編集者、研究者として活動しています。以前は、eWeek 誌の編集長として、エンタープライズ IT に関する報道全般を統括していました。2017年と2018年には、分析結果に基づくランキングを公開している調査会社 Richtopia 社から、世界で最も影響力のある250人のビジネスジャーナリスト (65位) に選出されています。

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