モノのインターネット (IoT) についてまず知っておくべきこと。それは、IoT が単に機械とデバイスをつなぐだけではなく、機械やデバイスと人間をつなげるということです。
今のところ、IoT ネットワークで利用できる自動化のレベルはさまざまです。しかしほとんどの場合、IoT デバイスが収集したデータを受け取るのは私たち人間です。そして、そのデータに基づいて、会社の業務の有効性や新しい製品/サービスの改善や開発の機会に関する意思決定を行っているのもまた人なのです。
IoT とは何か?
IoT の定義について調べると、たくさんの専門用語が出てくるでしょう。簡単に言えば、IoT とはデバイスを使ってデータをキャプチャする仕組みのことです。たいていの場合、このデータは粒度が高く、次から次へと生成されるので、意思決定者が処理できる量をはるかに超えています。また、適切な情報を意思決定者に伝えるには、データを処理して分析する作業が必要です。しかし、情報をかみ砕いて理解すれば、次のようなさまざまな目的にその情報を活用できるようになります。
プロセスを改善して、運用コストを削減する。
将来の自動化レイヤのために、データを収集、処理するための基盤を築く。
製造とロジスティクスのプロセスを改善して、廃棄物の削減と効率化を図る。
調達から輸送や配送まで、資材の移動をより適切に管理することで、サプライチェーンの効率を高める。
建設現場、鉱山、配送センターなどの危険な作業環境で、カメラとリアルタイムのアラートを使用して安全性を高める。
工業用建物、商業施設、および住宅で使われる冷暖房設備、冷蔵設備、電気の使用効率を高めて、持続可能性の目標を達成する。
IoT のユースケースは増え続けており、そのことが現在の急成長につながっています。推定では、2018年末の時点で70億台の IoT デバイスが導入されています。2021年には、その数が350億台に急増し、2025年には750億台に達すると予想されています。
この背景にあるのが、状況の変化により迅速に対応するための運用プロセスの変革を求める声です。そのためには、データの中身を理解し、データに基づいて行動し、特定のフローを実行して結果を最適化する必要があります。古いデータベースに放置されたままのデータが有効活用されることは決してありません。インテリジェントなデータ管理プラットフォームを利用して、データを適切に分類、分析すれば、自社をデジタルに強い組織へと変貌させるきっかけが得られます。そして、私たちの生活に変化をもたらすことになるでしょう。
IoT の基盤を築くデータのキャプチャ
組織に流入するデータは、さまざまなソースから発生します。IoT は、センサーやカメラなどの監視機器からデータを収集することで、そういったデータソースを拡充します。データをキャプチャするデバイスはどのような場所にでも設置できるため、皆さんも出勤途中に何度かすれ違っているかもしれません。
例えば、信号機や建物の入り口に設置されたカメラ、人が近づくと点灯する廊下のセンサー、製造用モーターや駆動システムに搭載された機器の性能や状態を監視するためのセンサー、小売店で商品棚の在庫を追跡したりレジの精算を速めたりするためのカメラとセンサーがあります。ほかにも、運転パターンを推測したり事故を検知したりするために、加速度や現在地を送信するセンサーなど、例を挙げればきりがありません。
IoT は、接続可能なすべてのものを接続するようになると言われてきました。この予想が現実となる可能性は、日に日に高まっています。ただし、企業が IoT の取り組みを始めるにあたっては、次のような重要事項を検討する必要があります。
1) ロードマップを作成する
明確な目標のないイニシアティブは、その途中で大失敗に終わる可能性があります。ほとんどまったく利益を上げられないまま、想定外のことが起こって予算を超過したテクノロジープロジェクトは数知れません。したがって、まずビジネスのニーズや機会を把握し、そのニーズや機会に合わせて IoT への投資を検討する必要があります。
まず IoT トランスフォーメーションの包括的なビジョンを検討し、そのビジョンをサポートする戦略的能力の開発に役立つ可能性が高いプロジェクトのブレインストーミングを行いましょう。プロジェクトをテーマやデータソースと結びつければ、さまざまなプロジェクトを進めるにつれて、IoT トランスフォーメーションの取り組みから得られるメリットが倍増することを実感できるようになります。優れたプロジェクトを選び出すには、データに基づく洞察を活用して、サポートしようとしている人々とプロセスに対する理解を深めることが大切です。
プランナーの多くは、IoT のデータ収集の側面に焦点を合わせがちです。しかし、データのキャプチャは最初のステップに過ぎず、そのデータを分類、整理、解釈する取り組みがその後に続きます。そうして初めて、組織にとって有意義な成果をもたらす洞察が得られるのです。
2) 成果を定義する
ビジネスの成果を最初から明確にしておく必要があります。予防保全で生産や倉庫のプロセスを改善したいのであれば、その目標をあらかじめ明らかにしましょう。顧客の好みを知り、ターゲットを絞った新しい製品やサービスを立ち上げる場合にも、その目標を明確にしておいてください。
IoT は、きわめて大きな変化をもたらす可能性を秘めています。しかも、その変化はすでに始まっています。よくある例の1つは、車のエアコンをつけたり車をガレージに停めたりする操作をリモートで行える機能です。また、心臓発作や脳卒中を起こした人がウェアラブルデバイスを身に着けていれば、大きなダメージを受ける前に救急車を呼んで命を救うことができます。
ここで、もう一度原点に立ち返りましょう。IoT はデバイスを接続するだけのものではありません。人々に貢献するためのものなのです。
「効果的な予知保全とは、IoT センサーやアルゴリズムで稼動時間を高めることだけを意味するわけではありません。企業データを予知保全のあらゆる取り組みの中心に据える、というのが基本的な考え方なのです」
Cloudera で行政機関向けソリューション担当シニアソリューションアーキテクトを務める Rick Taylor の記事はこちら
著者
Pedro Pereira
Pedro Pereira 氏は、ニューハンプシャーを拠点とするフリーランスのライター兼編集者です。サイバーセキュリティ、AI、IoT などをテーマに、20年以上にわたって IT 業界を取材しています。