
「ビッグデータ」という言葉に対して連想するものが、チャンスなのか、恐れか、混乱かは、尋ねた相手によって異なります。
データ収集が顧客の好みを知り、画期的な製品を開発するための非常に貴重なツールであることは明らかです。しかし、企業はこれらの利点と、ユーザーの信頼を維持し、企業価値を守るという大変な課題とのバランスを取る必要があります。
KPMG 社の調査によると、回答者の91% が、データに関して責任を負うための対策を企業が主導して確立するべきだと考えています。つまり、企業が適切と考える方法でデータを活用し、後で許しを求めるだけでは不十分です。今や業界のリーダーは、倫理的にデータを使用するという未来への道を拓く立場にあります。
では、ビッグデータの倫理をめぐる議論で最も重要な側面は何でしょうか?
この記事では、何を知るべきかと、革新的な組織が責任を持ってデータを使用しながら成長し続ける方法について説明します。
合理的な意思決定か、偏見の新たな原因か
例えば、従業員を1年間に40% 増やすことができると想像してみてください。今日の非常に競争の激しい人材市場の中で、莫大な金額を費やすことも時間を無駄にすることもなくチームを構築するこのチャンスに、多くの成長企業が飛びつくでしょう。
人工知能 (AI) でビッグデータを活用する採用システムのおかげで、これはすでに現実になっています。AI ツールによって、膨大な数の候補者データが分析され、事前スクリーニング、履歴書の綿密なチェック、面接、新入社員のオンボーディングにかかる時間を短縮できます。
しかしこの進歩は、偏見の増加という深刻な問題にも結び付いています。
適切な監視と継続的に更新されるデータセットがなければ、新しいテクノロジーは過去の偏見を永続化させる可能性があります。Amazon 社が AI を利用した採用ツールをテストしたところ、女性の応募の評価が下げられていることがわかりました。一方、Microsoft 社の Face++ による顔認識ソフトウェアは、行動評価で否定的な感情を割り当てることで、白人以外の応募者を差別していました。
ビッグデータを活用した洞察は利便性と運用効率を向上させますが、企業のミッションや社会規範の進歩と常に同期して機能するとは限りません。そのため、最先端の AI インターフェースでさえ、Fortune 500の役員に指針を示すまでには至っていません。Delphi は道徳的判断を行うために特別に設計されたテクノロジーですが、大局的な見方をするように次のように注意を促しています。「モデルの出力は人へのアドバイスに使用するべきではなく、潜在的に攻撃的であったり、問題や弊害があったりする可能性があります」

先を見越したデータポリシーは利益をもたらす
急速に変化するデータサイエンスの世界では、実際にデータがどのように使用されているかという日々の現実に法律が追い付いていないことがよくあります。
2019年の Pew 社の世論調査によると、回答者の80% 近くが、収集したデータを企業がどのように使用しているかについて少なくともある程度は懸念していました。それでも米国には、企業が個人情報を収集、保存、共有する方法を規制する標準の国内法がありません。一方、ヨーロッパでは一般データ保護規則 (GDPR) によってオンラインでの個人情報の使用方法を統一するよう進歩してきました優れたデータガバナンスは社内から始まります。
大規模な侵害によってユーザーのデータが漏えいした場合、「現在のルールは順守した」と言うだけでは、良い評価を維持するのに十分ではない可能性があります。そうではなく、先を見越したアプローチで透明性を示し、変化する世界をただ追いかけるだけの状態から抜け出すべきです。
これは実際にはどのようになるでしょうか。例えば、次のようなステップで進めます。
組織の枠を超えた利害関係者で構成されるデータ倫理委員会を創設する。
ビッグデータに関連する倫理的シナリオについて定期的に議論する。Gartner 社が推奨するのは、複雑なデータ問題の複数の側面を考慮するために、普遍主義的な倫理、結果主義的な倫理、ケアの倫理など、さまざまなメンタルモードを使用することです。
画一的なソリューションではなく、適応性の高いガバナンスを実施し、文脈に基づいてポリシーを策定する。変化するデータ問題への対応を評価するため、企業の価値を見直すことから始めるとよいでしょう。
ビッグデータへの人優先のアプローチ
Cloudera の Data Impact Awards では、イノベーションを起こして、コミュニティが直面している差し迫った問題を解決するためにリーダーがどのようにビッグデータの力を活用しているかを紹介しています。このような組織による最先端の取り組みをご覧ください。
Unionbank 社は、フィリピンの、特に銀行口座を持たない人々の高まるニーズに応えています。金融サービスの利用者を増やすため、この組織は AI を活用した信用度採点とリスクモデルを使用しました。これにより、ローンの承認率をほぼ2倍にし、より幅広い個人や企業にクレジットを提供することができました。フィリピンは2023年までに成人の70% が銀行取り引きできるようにすることを目指しているため、Unionbank 社のような組織は、参入障壁を取り除きながら、ビッグデータによって個人の資産管理をよりシンプルにすることができます。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、Bank Mandiri 社は、カスタマーケアのスピードアップとスタッフの安全確保の両方を実現できる俊敏性の高いシステムを必要としていました。そこでビッグデータを使用し、新しいソースを取り入れて銀行業務を合理化したところ、より安全で効率的な日常業務につながりました。中央システムでデータを使用することで、Bank Mandiri 社は支店を監視し、取引の価格と量を追跡し、顧客の金融サービスへのアクセスを増やし続けることができました。
著者

Cindy Maike
Cindy Maike は、Cloudera のビジネスおよび製品ソリューション担当副社長です。ビジネス上の問題の解決に情熱を注いでおり、ビジネスアーキテクチャーと戦略、会計と財務、戦略的計画、ソリューション開発などを中心に、金融サービス、輸送、ヘルスケアにまたがる専門知識を持ち、コンサルティングおよびアドバイザリーサービスを25年以上担当しています。