Evolve logo オンデマンド配信 Evolve 2023 Tokyo|AI、データと分析の先進事例を紹介
  • Cloudera Cloudera
  • 無人運転車の実現にこれほど時間がかかるのはなぜかパート2: ビッグデータの大きな課題

    Grace Dobush フリーランスジャーナリスト。ADP ReThink Quarterly 編集者。

    2023年7月26日
    ばらばらに歩きながらデバイスでつながっている人々

    パート2: ビッグデータの大きな課題

    現実世界で自動運転車によって生成される大量のデータを処理するためには、多岐にわたる連携が必要です。

    この5年間で、完全自動運転車に必要な高度なドライバー支援テクノロジー、ディープラーニング、通信プロトコルには、大きな進歩が見られました。

    しかし、その進歩を妨げる課題がまだいくつか待ち受けています。シリーズ第1回では、予測不可能な人的要素を取り上げました。今回は、自動運転に関するビッグデータと技術的課題について取り上げます。

    NXP Semiconductors 社のグローバル製品・ソリューションマーケティング担当ディレクターである Brian Carlson 氏は次のように話しています。「自動運転は現在、いわゆる幻滅期にあります。問題は、人々が思っていたよりも自動運転がはるかに難しかったということです」

    Cloudera の製造および自動車部門でマネージングディレクターを長年務めて最近引退した Michael Ger 氏はこう説明しています。「膨大なデータを必要とします。そのデータを取り込み、保存し、認識レイヤをトレーニングするのは、きわめて複雑です」

    センサーは非常に高価なままですし、膨大なデータを処理して解釈するには相当なコンピューティング能力が必要です。この問題を解決するために、Cloudera は NXP 社、Teraki 社、Airbiquity 社、WNDRVR 社とともに Fusion Project を立ち上げました。

    Teraki 社の共同創設者である Geert-Jan van Nunen 氏は次のように話しています。「自動運転車をトレーニングするための完全なデータループを実現するために、業界コンソーシアムを結成しました。このエコシステムは巨大で、チップセットから、センサー、データトレーニング、ストレージ、さらにはクラウドと車のセキュアで安全な接続まで含まれます。Fusion Project は、現実世界で実際の車と人に対してもこのエコシステムとライフサイクルのすべてが機能することを世界に示そうとしています」


    ビッグデータに関するもう1つの大きな問題はサイバーセキュリティです。サイバーセキュリティの手法は何十年にもわたって変わっていませんが、幸いなことにビッグデータプラットフォームが役立ちます。
     

    ブログを見る

    NXP Semiconductors 社のグローバル製品・ソリューションマーケティング担当ディレクターである Brian Carlson 氏は次のように話しています。「自動運転は現在、いわゆる幻滅期にあります。問題は、人々が思っていたよりも自動運転がはるかに難しかったということです」

    リアルタイムな運転データ

    次世代の自動運転車を実現するには、路上のセンサー搭載車両からデータを収集して情報を提供することが不可欠です。

    人間には五感があります。自動車の場合は、レーダー、ライダー、ビデオです。

    van Nunen 氏によると、車1台に使用されるセンサー数が増え、解像度も向上しています。高い解像度は、機械学習の信頼性向上に寄与します。ビデオの解像度が高ければ、路上の人が人として識別されやすくなるからです。

    「何百万マイル分ものデータをテープレコーダーのようにすべて再生できます。だからこそ機械学習が重要であり、時間がかかります。機械学習のデータ管理はきわめて重要です」と Ger 氏は指摘します。

    「しかし、膨大な量のデータを扱うことになります。すべてのデータを車内でリアルタイムで処理する必要があり、それは大きな課題です。車で移動しながら、車の周囲にある物を安全かつ迅速に検出する必要があります。この問題を車内で解決するのです。しかし、車にデータセンターを搭載することはできません」と van Nunen 氏は説明します。

    「当社のソフトウェアは重要なフレームとオブジェクトを検出し、それらを高解像度でアップロードします。しかし、重要度の低いオブジェクトは低解像度にしておきます。コンピューティング能力をあまり使わない処理でシグナルのノイズを除去します」(van Nunen 氏)

    データ量が減れば、電力とスペースを節約できます。Carlson 氏はこう説明します。「現在、ハードドライブの巨大なラックがトランクを占領しているケースが多いです。当社は、車に実際に搭載されているハードウェアも扱っています。試験車両だけでなく、路上を走行する車から取得した実際のデータも使用しています」

    現実世界の運転は複雑で予測不可能です。人間は疲れたり気が散ったりします。自動運転車の能力を人間以上に高めることは、自動運転車が他の車、歩行者、自転車と安全に共存するために不可欠です。

    Carlson 氏は次のように話しています。「たとえ99.9% の安全性があったとしても、その0.1% は何百万マイルも走れば大きな危険になります。イーロン・マスク氏が何と言おうと、まだ機は熟していません。目標は変わり続けているのです」

     

    実現間近のアプリケーション

    自動運転試験車両の重要な安全補助システムの1つは、ドライバーモニターです。AI を活用した映像監視により、乗車している人間は潜在的なトラブルに注意し、気付くことができます。

    Consumer Reports 社の車両テクノロジー担当マネージャーである Kelly Funkhouser 氏は「自家用車のドライバーはドライバーモニターによって常時監視されることに抵抗を感じるかもしれない」と指摘しますが、長距離トラック運転手はすでにこの手法を実践しているので、状況が変わるのはそれほど難しくないでしょう。

    パンデミックの発生以降、自動運転車は長距離トラック業界の労働問題の解決策として注目を集めています。パンデミック中にオンラインショッピングの利用が急増したことで、世界経済における流通の重要性が高まっています。

    高速道路という閉じられた環境では、自動運転トラックの試験が比較的安全にできます。「今後数年で、長距離走行では自動運転車を使用し、市街地走行では人間に運転させる事業者が増える」と Carlson 氏は予測しています。

    Embark Trucks 社は2024年にカリフォルニアとテキサスで自動運転車の発売を予定しています。Waymo Via 社 (Alphabet 社から独立した子会社) は Ryder System 社の協力のもと、Daimler 社が製造する自動運転トラックの試験を全米展開しようとしています。TuSimple 社は UPS 社および Navistar 社と提携して、米国南西部でトラックの試験を進めています。

    パートナーシップが重要

    自動運転の未来の可能性を決めるのは経済です。

    「本格的に軌道に乗せるには、センシングとコンピューティングの機能を効率よく大量生産できる規模にまで拡大することが必要」と Ger 氏は説明します。自動運転車の分野で多くのイノベーションを起こしているのはサプライヤーや新興企業です。これは最近、自動車メーカーが新興ハイテク企業を買収していることから見ても明らかです。

    「過去5年間に広く知られるようになったスマート機能の多くは革新的な研究の成果です。しかし、OEM がそれを採用するのは、もっと手頃な価格になったときでしょう。クラウドは、あらゆる未来の車両にとって重要です。今、アーキテクチャーの変化と電気への移行という大きな転換にあります。そのすべてに同時に対応できる経済的余裕が業界にあるでしょうか」(Carlson 氏)

    答えは出つつあります。現在の EV バッテリーで高性能な処理を行うのは、あまりに負荷が高すぎます。「走行可能距離に影響が出ます。バッテリーを1日中もたせたいなら、車を四輪のデータセンターのように扱うことはできません」(Carlson 氏)

    「OEM は今後5~10年での完全な電動化を目指し、投入する資金を増やしています。多くの人が、2030年には半数が電気自動車になるだろうと言っています。自動運転車はというと、そこまで普及するとは考えられていません」と Carlson 氏は話し、2030年にはレベル3の自動運転車が普及しているのではないかと予測しています。

    Accenture 社は、2021年には15% だったレベル2の自動運転車が、2030年までに市場の60% を占めるようになるという業界専門家の予測を報告しています。そしてレベル3および4の自動運転車が市場を占める割合は、2030年になってもわずか5% と予測しています。

    当然、自動運転車によって生成される大量のデータを処理するためには多岐にわたる連携が必要です。そして、そのデータを共有および調和することは、業界全体に大きな利益をもたらし、すべてを好転させる可能性を秘めています。

    著者

    著者 Pedro Pereira 氏の写真

    Grace Dobush

    Grace Dobush はベルリンを拠点に活動するジャーナリストです。Fortune、Wired、Quartz に寄稿しており、ADP ReThink Quarterly の編集者でもあります。

    他の記事


    データ企業に最高倫理責任者は必要か

    さらに詳しく


    無人運転車の実現にこれほど時間がかかるのはなぜか

    さらに詳しく

    Your form submission has failed.

    This may have been caused by one of the following:

    • Your request timed out
    • A plugin/browser extension blocked the submission. If you have an ad blocking plugin please disable it and close this message to reload the page.