組織に適した持続可能なデータガバナンス戦略を構築するためのヒント
Monique Hessling、Cloudera 保険業界担当マネージングディレクター
Joe Rodriguez、Cloudera 金融サービス業界担当シニアマネージングディレクター
2023年8月15日

世界各国で新しいプライバシー規制が導入される中で企業がコンプライアンスを維持するには、データガバナンス戦略を明確に定義する必要があります。
データガバナンスを実現するには、データに関するあらゆる処理について、アカウンタビリティ、正確さ、セキュリティを保証するためのポリシーと手順を定める必要があります。具体的には、所有しているデータと各データの責任者を明確にし、データのアクセス、変更、アーカイブ、削除を適切に行うためのプロセスを整備します。
データガバナンス戦略の策定には2つのアプローチがあります。
- 規制が最も厳しい国に合わせたコンプライアンス指標をすべてのオペレーションに適用する。
- 国ごとの規制の違いに合わせて個別にコンプライアンスを定める。
最も厳しい基準を全体に適用するアプローチはシンプルですが、デメリットがあります。それは、ある国で利用が許されるタイプのデータが、別の国のプライバシー規制に合わせたガバナンスの適用によりアクセスできないという状況が起こり得ることです。
代わりに、異なる規制に個別に対応できるデータ管理プラットフォームを使用する方法もあります。これなら、プライバシー規制に違反するリスクを回避しながらビジネスに価値を提供できます。ここでは、規制が厳しくガバナンス戦略の策定が不可欠な2つの業界、つまり金融サービス業界と保険業界について詳しく見ていきます。
どちらの業界でも、今日、プロセスのデジタル化とサービスの刷新を目指して大規模な変革が進んでいます。また、どちらの業界も、顧客から非常に機密性の高い情報、すなわち各国の政府が保護を強化しているタイプのデータを収集し、保管しています。
プライバシー規制としては EU の一般データ保護規則 (GDPR) が代表的ですが、カナダ、米国カリフォルニア州、インド、南アフリカでも厳しいデータ保護法が施行されています。同様の規制を取り入れる国、州、地域は今後も増え続けるでしょう。そのため、既存の規制に対処するだけでなく新しい規制にも対応できるポリシーを確立することが戦略として重要になります。
2023年、アジア太平洋地域の企業の間ではどのようなデータトレンドが見込まれるでしょうか?
こちらのブログで、セキュリティやガバナンスなど、複雑な問題に対処する方法をお確かめください。

銀行・金融業界におけるデータガバナンスの基本要件
金融サービス企業は、データガバナンス戦略を適切に運用することによって大きなメリットが得られます。例えば、実店舗を展開する企業でも、データを上手に活用すると、オンラインのみでサービスを提供する企業に負けない競争力を維持できます。さらに重要なメリットは、顧客に付加価値を提供できることです。
適切な統制と手順を確立すれば、顧客の好みやニーズに関する価値ある洞察を引き出して、意思決定に役立て、収益向上につなげることができます。
金融サービス企業には、ハイブリッドクラウド環境を活用し、5G、モノのインターネット (IoT)、エッジネットワークの普及を追い風に、ビジネスをさらに飛躍させることが求められています。
これらのテクノロジーをデータ分析と組み合わせることで、顧客についてより深く理解できます。そうすれば、顧客の身元や信用情報の確認などの処理を効率化して、ローンや与信枠の承認プロセスにかかる時間を短縮できます。
このように、金融サービス企業の目の前には、デジタルトランスフォーメーションを通じてイノベーションを加速し、顧客サービスを向上させる大きなチャンスが広がっています。このチャンスを掴むには、自社が保有しているデータを把握し、その価値を理解して、社内で幅広く活用できるようにすることが重要です。同時に、セキュリティとコンプライアンスをしっかりと維持し、組織として法令を遵守していることを示す必要もあります。

保険業界におけるデータガバナンスの基本要件
金融サービス業界と同様に、保険業界も大きな転換期を迎えています。データプラットフォームと機械学習を活用することで、例えば、コネクテッドカーで運転データを監視して、スコアリングモデル、価格決定アルゴリズム、衝突アラームを生成し、安全運転の支援や保険金請求の削減につなげることができます。
保険会社は、顧客から収集する大量の機密情報をイノベーションに活かすこともできます。ただし、そのためには、プライバシーとサイバーセキュリティに細心の注意を払う必要があります。データ分析とモダンデータアーキテクチャのテクノロジーを導入すれば、顧客にカスタマイズやセルフサービスを提供したり、顧客が納得できる見積もりをすばやく作成することができます。
保険会社は、GDPR などの規制に対応するだけでなく、2023年1月に施行された新しい国際財務報告基準、IFRS 第17号にも対応する必要があります。この基準は、保険契約のあらゆる側面に一貫した原則を適用するものです。これまでの一貫性のない状況を解消することで、投資家、アナリスト、その他の利害関係者が保険会社、契約、業界を有意義に比較できるようになります。
適切なデータガバナンスを実現することは、デジタルトランスフォーメーションを成功に導くとともに、IFRS 第17号を含む規制や基準に常に準拠するためにも効果的です。
データガバナンスを構築するための7つのヒント
金融サービス業界でも保険業界でも、効果的なデータガバナンスを構築することは、価値の最大化、イノベーションの加速、リスクの軽減につながります。
これらの目標を実現するための7つのヒントをご紹介します。
組織が所有、生成、利用するすべてのデータのインベントリを作成する。
管理対象となるすべてのデータに一貫した基準を適用する。
データのオーナーを特定し、責任を明確化する。
特に厳重な保護が必要な機密データを洗い出す。
適用されるプライバシー規制に対応するための明確な指標を定める。
成果を追跡し改善領域を特定するための指標を定める。
データガバナンスプロトコルをレビューし、必要に応じて調整する。
金融サービスや保険会社にとってデータガバナンス戦略の構築は必須です。効果的な戦略を実現できれば、適用規制に準拠しながらデータを活用して、イノベーションを強化し、他社との差別化を図るとともに、企業としての信頼を築くことができます。
企業のデータガバナンスロードマップについて詳しくは、こちらをご覧ください。
著者
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Monique Hessling
ビジネスリーダーシップとデータ戦略の両方に関する知識と知見を活かして、保険業界のお客様と、データの活用、分析、機械学習の全社的な最適化に取り組んでいます。キャリアを通じて、保険業界でのビジネスリーダーシップとデータおよび分析に関わる職務を務め、AON、Chubb、Mutual of Omaha、Zurich Financial Services 各社を含む幅広い企業と仕事をしています。

Joe Rodriguez
金融機関および金融サービス企業に、ビジネス成果を向上させるためのデータと分析戦略について助言しています。Cloudera に入社する前は、Morgan Stanley 社でオペレーション IT 担当 COO とトランスフォーメーション担当責任者を務めていました。キャリアを通じて、Bank of America、Federal Reserve、HSBC、Credit Suisse、Merrill Lynch、JPMorgan 各社のさまざまな経営幹部と仕事をしています。