新しい米連邦法が今後10年間にデータサイエンスと AI をどのように発展させるか
何年にもわたって争いや不作為を続けてきた米国議会がようやく一致団結し、IT、データ、インフラストラクチャーを強化する3つの重要な法案を作り上げました。これらの法案は今後12か月以内に連邦レベルで可決され、成立する予定です。
これは米国全体にとって素晴らしいニュースであるだけでなく、この政府による新たなサポートを活用する方法について知る必要があるエンタープライズデータや分析の責任者にとって、特に重要な出来事です。本記事では、この話題について取り上げます。
また、この3つの重要な法案について解説し、これらの法案がインフラストラクチャー、イノベーション、および世界市場における米国の競争力に与える影響を評価します。
2021年インフラ投資雇用法
インフラ投資雇用法は、今の時代にとっておそらく最も重要な連邦法で、議会での可決を経て2021年11月に ジョー・バイデン米大統領によって署名されました。この法律により、今後5年間で連邦高速道路プロジェクトに3,500億ドルが拠出され、その後さらに1,100億ドルが拠出されます。また、高速インターネット設備のアップグレードに650億ドル、飲料水サービスの改善に550億ドル、交通手段の近代化に390億ドルなど、さまざまなプロジェクトに合わせて1.1兆ドルの資金が投じられます。
特に注目されるのは、ゼロエミッションの未来を実現するためのクリーンエネルギーとエネルギーテクノロジー、および電気自動車 (EV) の充電ステーション向けインフラストラクチャーへの投資です。これらの整備が進んでいないことが、すべての電気自動車の普及をさらに停滞させてきました。しかし、その後数か月で EV の販売は3倍になり、2023年2月にはバイデン・ハリス政権が、全米を網羅する EV 充電ネットワークが2年以内に実現すると発表したのです。
すでに何千もの企業が、送電線、水道サービス、有料道路、橋梁、空港、政府関連施設、太陽光および風力発電施設、高速インターネット基地局などで数十ものプロジェクトを進めており、少なくとも今後10年間は忙しい状態が続くと予想されます。この法律の狙いは、米国のデジタルデバイドを解消し、米国の隅々にまで高速インターネット接続を提供することにあります。IT の開発や本番環境は、これらのプロジェクトのほとんどに関係しています。さらに、デジタルスキルのトレーニングや関連する公平性イニシアチブに27億5000万ドルが投じられるため、より多くのデータエンジニアや科学者の雇用が創出されます。
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2022年 CHIPS および科学法
2022年8月9日にバイデン米大統領によって署名された CHIPS および科学法 (H.R. 4346) は、まさにデータ専門家が求めていた通りの内容になりました。これは世界市場で米国企業の競争力を高めることを目的とした、連邦政府による本格的な投資です。また、開発と製造の両方の分野で、数十万人分の新しい IT 雇用を米国にもたらします。
CHIPS 法では、米国の半導体企業とそのエコシステム全体に527億ドルもの補助金が提供されます。これにより、チップ企業が新しい工場を開設するための資金が提供されるだけでなく、STEM の取り組みが強化され、ソフトウェア・ドリブンなデジタル化の基盤となるインフラストラクチャーが開発されることになります。また、新型コロナウイルス感染症の流行中に自動車業界や家電業界などの手足を縛ったチップ不足が解消され、世界のチップサプライチェーンに弾力性がもたらされます。バイデン米大統領は「未来は米国で作られるようになる」と述べ、この施策を「米国そのものへの一世一代の投資」だと表現しました。
この法律では、全投資額のうちの100億ドルを全米の各地域のイノベーションハブとテクノロジーハブに投資し、州政府と地方政府、高等教育機関、労働組合、企業、およびコミュニティベースの組織を集めて、テクノロジー開発のための地域パートナーシップを構築することが認められています。
ドイツ銀行のアナリストである Ross Seymore 氏は、Intel 社、Texas Instruments 社、GlobalFoundries 社など、米国で最大規模の製造工場 (ファブ) をすでに持っているチップメーカーが、CHIPS 法の恩恵を最も受けるだろうと述べています。ただし、これらの企業は巨大な下流のエコシステムを抱えているため、サプライヤー、請負業者、コンサルタント、パートナーなどにも恩恵がもたらされるでしょう。
連邦政府が資金を拠出する支援体制に加わるにあたっては、自社のパートナーをチェックし、パートナーがどのような資産になるのかを判断しましょう。例えば、共通のクライアント向けに、ソフトウェアまたはハードウェアのプロジェクトに共同で取り組んだり、特定のユースケースのソリューションを共同で開発したりすることが考えられます。
これはまた、先進的な産業における米国の専門性と競争力を強化することにもつながります。そのような企業の多くは、デジタルテクノロジーに焦点を当てています。法律の名前に CHIPS という単語が含まれていることからもわかるように、コンピューターチップの製造は多数の注目を集めています。オハイオ州、アリゾナ州、ワシントン州などでは、州政府や連邦政府のさまざまな優遇措置のおかげで、新しいチップ製造施設やデータセンターが建設されています。
最も広く知られている新しい設備は、オハイオ州コロンバスで Intel 社が建設している大規模なファブリック工場です。この施設は現在、かつてトウモロコシ畑だった場所に作られています。このような次世代のテクノロジーへの投資が、連邦政府による資金で行われているのです。
しかし、デジタルハードウェアテクノロジー以外の分野にも、多額の投資が行われています。この施策は、米国のエネルギー産業の革新的な取り組みや、地域レベルで実現される他の高度な産業プロセスに資金を投じるものでもあるのです。例えば、ネバダ州リノのバッテリー開発施設、オレゴン州プラインビルの11の新しいデータセンター、カリフォルニア州のいくつかの場所にある大規模な風力発電エネルギーセンターなどが挙げられます。
また、CHIPS 法では、政府機関、教育機関、民間部門における AI、量子コンピューティング、ロボット工学の研究に2,000億ドルの資金が提供されます。この資金は、新しい機械学習システムの開発とトレーニング、サイバーセキュリティの向上、および新世代のデータサイエンティストと AI 研究者の教育に役立てられます。例えば、システムとネットワークのセキュリティを向上させるための予測ソフトウェアとアルゴリズムの開発に資金が投じられます。また、重要なシステムへのマルウェアの侵入を防ぐために、ソフトウェア開発のセキュリティを強化することにも焦点が当てられています。詳細はこちらから。
「未来は米国で作られるようになる」とバイデン米大統領は述べ、この施策を「米国そのものへの一世一代の投資」だと表現しました。
2022年インフレ抑制法
最後に3つ目の法律を取り上げましょう。これは、連邦予算の財政赤字を10年間でわずかに減らすための法律で、インフラ削減法と呼ばれています。ただし、これは主に気候変動と医療に関連した法案であるため、やはりデータ業界が深く関与することになります。この法案は、2022年8月16日に署名されました。
米議会予算局 (CBO) は9月、2022年インフレ削減法 (IRA) のスコアを発表し、2022会計年度の調整指示に従って、歳入の増加、処方薬コストの削減、新エネルギー・気候変動・医療への資金提供、および財政赤字の削減を図ることを決定しました。また、このような環境データセットなど、さまざまなデータセットを開発し、取り組みを進めるための予算配分を実施します。繰り返しになりますが、これらの条項のほとんどは、米国のデータセクターと IT セクターの企業、とりわけエネルギー、気候、ヘルスケア関連の企業に直接影響を及ぼすことになります。
サマリー
国民を保護することは、あらゆる政府にとって最も重要な責任の1つです。地方自治体レベルでは、そのために AI を利用した防犯カメラがますます使われるようになっています。インテリジェントなカメラは、顔を認識したり、動きや音を検出したり、人数を数えたりできる機能を備えています。例えば、カメラで銃を識別することができます。このような巨額の投資によって、今後10年間で新しいテクノロジーを生み出す物理的なインフラストラクチャーが提供されるだけでなく、イノベーションが促進されることが期待されています。また、こうした新しい職場やワークフローの登場によって、データサイエンスとデータ分析、および IT の開発や本番環境を担当する新たなリーダーの育成が進むことも期待されています。次世代の AI ツールとベストプラクティスは、間違いなくデータ分析およびソフトウェアとハードウェアの生産を加速し、最適化することになるため、将来の新しいアーキテクト、科学者、エンジニアにとって、今までにない素晴らしい職場が作られることになるでしょう。機械学習の未来と機械学習が組織にもたらす意味については、こちらの Forrester 社のレポートをお読みください。
著者
Ganesh Hegde
Ganesh Hegde は、Cloudera の業界向けソリューション担当マネージングディレクターとして、「製造、自動車、産業」の分野を担当しています。Ganesh は製造業界とソフトウェア業界で25年以上の経験を有しています。また、半導体業界とハイテク業界で仕事をした経験もあります。Cloudera に入社する前は、SAP 社、GE Digital 社、Applied Materials 社で、業界戦略、事業開発、GTM 戦略、製品管理、マーケティングを担当し、顧客のビジネスのデジタルトランスフォーメーションを支援していました。Ganesh の幅広い業界経験には、Intel 社や Cypress 社といった半導体企業での勤務も含まれています。Ganesh は現在、ビジネスプロセスの再構築を手がけているほか、運用のデジタルトランスフォーメーションを実現するさまざまなテクノロジーとソリューションの実装に尽力しています。